R6_ピアサポーター養成講座③開催報告

まず始めに、徳島県生活環境部男女共同参画・人権課の吉内さんより、県の男女共同参画の取り組みについて紹介がありました。

法制定などの世界および国内の出来事について、世界共通目標であるSDGsの中でもジェンダー平等は重要テーマであること、2024年日本のジェンダーギャップ指数は146か国中118位であり、健康と教育は世界トップレベルだが、政治と経済では最下位レベルで依然として低い現状であり男女共同参画社会の実現までには課題も多いと再認識できました。

徳島県の取り組みとして、昨年『男女共同参画第五次計画』および『困難な問題を抱える女性を支援するための徳島県基本計画』を策定し施策を推進していること、アンコンシャスバイアス(男女共同参画を推進するために自分では気づきにくい物の見方)をテーマとした動画を作成し啓発していることなどについて紹介がありました。また、『ときわプラザ(アスティとくしま2階)』での相談事業や講座についての案内、行政窓口が開設している相談先一覧についても説明いただきました。

次に、『特定非営利活動法人リカバリー』代表大嶋栄子さんから、「相談はなぜ難しいのか」をテーマに講義いただきました。被害体験を背景とした精神疾患や生活上の障がいを持つ女性の支援を20年以上行ってこられた中、ここ1.2年で急増している薬物を乱用する若年女性たちを切り口として、相談に繋げることの難しさについてわかりやすく説明いただきました。

10代後半~20代の女性の間で、市販薬(咳止め、風邪薬、クリニック等で処方される眠剤など)の乱用や依存が増えているとのこと。「(特定の市販薬を)過剰摂取することで辛い現状から飛べる」などを謳ったSNSで、誤った市販薬の使い方に触れ「辛い現状から逃れたい」、「(今の自分ではだめだという思い込みから)自分を一気に引き上げたい」という思いで乱用や依存に陥るケースが増えていると知ることができました。

若年女性たちは、教育・医療の分野ではジェンダーギャップの少ない日本において学生時代まではさほど感じなかったジェンダーギャップを、就職活動や社会人になった途端感じ始めます。「自分が頑張れば活躍できるはずの社会」なのに「うまくいかないのは自分の努力が足りない」からと自分を責め、自助努力が足りないという抑圧を感じるようになり息切れを起こしてオーバードーズにより救急搬送される女性が増えている実態を知ることができました。これは、個人の問題では決してなく、自己責任論を押し付けてしまっている社会の構造的な問題だと気づかされました。

「わたし、そんなに頑張れないんだけどな」と呟いた若年女性の言葉は切実です。しかし、彼女たちは「どこかに相談しようとは考えない」と回答したそうです。「相談しても何か解決するとは思えない」、「共感されるだけでは現実は変わらない」など相談に対して諦めの気持ちを持っているとのことでした。また、相談することで自分の状態を再確認することに抵抗がある場合も多く、相談に至るまでには高いハードルがあり、簡単ではないとよく理解できました。

他にも、「解決を求めない」相談ケースについて説明がありました。「誰かに相談したい、でもどうしたいのかまだ自分でもよくわからない」と訴えておられる方が勇気を出して出向いた相談機関の窓口で、担当者から「本人のわからないことに対して相談にのれない」と言われ傷ついておられたエピソードが胸に迫りました。相談に繋がった方がすぐに解決を望んでいるとは限らない事、本人の気持ちに沿った相談ができるかどうかもピアサポーターとして活動するにあたり必要な視点だと大切な気づきをいただきました。

 相談援助と一口に言っても、なにをどこまで担うのか、WEB相談/アウトリーチ/居場所づくり のどのアプローチにも利点と同時に難しさがあること、ひとつの機関で解決できることは少ないからこそ限界を理解しながらも、仲間同士や他機関とも繋がりあうことの大切さを教えていただきました。

最後は3名の先輩ピアサポーターによる事例紹介がありました。困難ケースへの対応とピアサポーター自身のメンタルヘルスの守り方について、健康上の不安を家族にも打ち明けられず一人で抱えておられた方が少しずつピアサポーターと信頼関係を築き、病院受診まで繋げ安心感を得ていただいたケース、ピアサポーターとしての心構えや普段から気を付けていること・『ピアサポートとくしま』の冊子の使い方などを紹介いただきました。ピアサポーターの活動が身近に感じられる内容で、これからピアサポーターとして活動される皆様自身が重要な人材であり、資源として活躍いただく際の参考にしていただきたいと思います。