【ピアサポーターコラム】ともにいる、ということ

【ピアサポーターコラム】ともにいる、ということ

「このまま死なせてやった方がこの子は幸せではないですか」。
おそらく深夜の病院からであろうお母さんの電話の声にメモ帳を探していた手が止まりました。

もう数十年も前、患者団体の事務局をさせていただくことになり、自宅に電話を引き、病気のお子さんを持つ親御さんのお手伝いをしていました。当時はもうネット上に医療の情報は溢れるようにあり、私に医療の知識があるわけでもなく、相談と言われてもなあ、と思いながらのスタートでした。

週に何度かかかってくる電話は「酸素吸入の管をほっぺに留めていたら肌が荒れてしまって」とか「病気があっても入園させてくれやすい幼稚園ってありますか」といった、忙しい主治医にはちょっと言い出しにくい、でも日常とても気になる話ばかりでした。

ああ、こういう話を聞くなら私にもできるなあと思い始めた矢先、掛かってきたのが冒頭のお母さんからの深刻な電話でした。こちらには何の資料もなく、自分の不勉強と安易な気持ちで仕事を引き受けてしまった後悔とで頭が真っ白になりました。

それでもなんとか「産後でお疲れではないですか、今、寒くないですか」そんなことを言った時、ふっと緊張が途切れたのか泣いておられる声が聞こえてきました。そこで、あなたの赤ちゃんと同じ病気のお子さんがこの団体にも何人かいて、小学生や中学生になっていますよ、ということと大変な病気を持ちながらも生きて生まれてきたのだから、手術を乗り越える力を持っているかもしれませんよ、という話をさせていただきました。
今考えるとなんの根拠もない本当に無責任なことでした。

その時の赤ちゃんは無事に手術を乗り越え、大きく立派な青年になりました。あの時、自分が話したことに何の意味も力もなかったと思います。ただただ聴き、ただただ一緒にいること、それだけでした。

ピアサポートにできることは小さいことかもしれません。でも、きっと誰かが一緒にいてくれた、考えてくれた、という経験はあなたを支える小さな力になる、と信じています。

(文責:あまびえ)

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